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パワーチェック 2002年 5月 21日
パワーチェックの結果をレポート風にまとめてみました。
1.目的
シャーシダイナモでトルクおよび馬力を計測することにより、車の状態を把握する。
またチューニングの方向性の確認、考察を行うことを目的とする。
2.原理
2.1 シャーシダイナモ
シャーシダイナモ(略してシャシダイ)とは、車の車輪をローターの上に乗せて回転させ(ローラー式)
その力を測定することによって、車の出力を得る測定器である。
またタイヤを外し、駆動軸に直接計測器を取り付けて測定する、ダイノパック式もある。
2.2 トルクと馬力の関係
馬力は次の式により、求められる。
馬力(PS) = トルク(kg・m) × 回転数(rpm) ÷ 716.6 (2.1式)
この式を見ると馬力は回転数に比例していることがわかる。
つまり、トルクが一定であれば回転数を上げるほどパワーが出るのである。
2.3 トルク
「トルク」とは、「クルマそのものを動かす(前に押し出す)ために必要な、絶対的な力の量」のことである。
「1kgの重りを、1m上まで持ち上げるのに必要な力」を「1kgm」と呼ぶ。
一般的には、トルクの大きさは、加速力、登坂能力、経済性などに関わってくる。
トルクが低中回転域から大きければ、加速や登坂能力はよくなるし、
あまり回転を上げずに走れるから燃費も良くなる。
なお、トルクはこれまで、この「kgm」の単位で表されてきたが、
国際的に表記を統一するために、最近ではNm(ニュートンメートル)で表されることが多い。
ちなみに「1kgm=9.80665Nm 」である。
個人的にはトルクはその回転数がどれだけ”得意”なのかを表していると解釈している。
例えばあるエンジンの特性が4000rpmで20kg・mであり、7000回転で15kg・mであれば、
馬力は(2.1)式より4000rpmで111.6PS、7000rpmで146.5PSとなる。
確かに7000rpmの方が”仕事”は多くこなせることになるが、
4000rpmの方がエンジンにとっては得意な回転数なのである。
別の例えをしてみよう。
ある人の前に大きな石があったとしよう。
その石を10メートル運ぶ仕事をするとき、
トルクはその人が石を”持ち上げられるか、持ち上げられないか”を表している。
つまり、石を10メートル運ぶのにかかる時間は関係ないのである。
アクセル操作はトルクのコントロールを行う作業である。
当然、計測時にはアクセル全開でないと正確なデータは取れない。
2.4 馬力
馬力(パワー)とは「同じトルクを出すための効率のよさ」を計る単位である。
つまり、同じ10kgmのトルクだとしても、10kgの重りを1m持ち上げるのに、
1000回転で1秒かかる場合と、5000回転で0.2秒で上げられる場合では
「5000回転のほうが馬力が高い」ことになる。
つまり、エンジンの場合の「馬力」とは、絶対的な力(トルク)と、
仕事をする速さ(回転数)とを掛け合わせた係数のようなものとなる。
具体的には「1ps 」は、4.5トンの重量を1分間に1m引き上げる「効率」のことをいう。
ゆえに馬力の大きさは、最高速度や、高速での追い越し加速の性能などに影響してくる。
なお最近ではトルクと同様、国際的な表記の統一のために、
馬力の表示も「ps」から「kW」に変更されつつある。
ちなみに「1ps=0.7335kW」となる。
トルクが「力」であるのに対し、馬力は「効率」である。
これも具体的な例を取り上げてみる。
停止状態から100km/hに加速するのにかかる時間を考えたときに、
5秒しかかからない車と10秒かかる車があったとすると、
5秒しかかからない車の方が馬力があるのである。
つまり馬力には時間の概念が入っており、そこがトルクとは異なるのである。
しかしながら(2.1)式を見れば、馬力とトルクが密接な関係を持っているのは明らかである。
つまり、
トルクが大きい
↓
エンジンの回転数の上昇が早い
↓
タイヤの回転数の上昇も早い
↓
加速が早い
↓
馬力がある
という流れである。
極端な例で、太すぎるマフラー&太すぎるエキマニ&ファンネル剥き出しで
低回転におけるトルクがスカスカな車を考えてみると、
低回転域では吹け上がりが悪い、つまりアクセルを踏んでも加速しないということになる。
一般道を走る限りは、坂道発進もあるだろうし、渋滞もある。
このような理由で街乗りでは低速トルクも重要視される。
3.方法
測定日時 |
2002年 5月 21日(火) |
測定場所 |
スーパーオートバックスかしわ沼南町店 |
測定装置 |
DYN ローラー式 |
測定車両 |
平成11年式 AE111レビン BZ-R (走行約55000km) |
タイヤ |
DUCARO REVSPEC (前輪5部山程度) |
測定ギア |
5速(6速MT) |
主な変更点 |
VTC (3500rpm、アクセル開度 約50%でON)
TRD イリジウムプラグ 熱価7 スプリットファイア プラグコード 純正エキマニ サーモバンテージ巻き
アーシング
TRD エアクリ純正交換タイプ
エンジンオイル-車検時のもの(おそらく純正オイル)
点火時期調整(後に進めすぎと判明) |
4.結果
得られたデータを表3.1に示す。
また速度はギヤ比とタイヤの外径から求めた。
各ギヤでの速度と回転数の表
表3.1 測定された回転数(rpm)、修正トルク(kg・m)、修正馬力(PS)
回転数 (rpm) |
速度 (km/h) |
修正トルク (kg・m) |
修正馬力 (PS) |
3500 |
95.1 |
15.5 |
75.7 |
3600 |
97.8 |
16.6 |
83.4 |
3700 |
100.5 |
16.9 |
87.7 |
3800 |
103.2 |
17.0 |
90.3 |
3900 |
106.0 |
17.0 |
92.5 |
4000 |
108.7 |
17.0 |
94.9 |
4100 |
111.4 |
16.5 |
94.7 |
4200 |
114.1 |
16.0 |
93.7 |
4300 |
116.8 |
16.1 |
97.0 |
4400 |
119.5 |
16.3 |
100.4 |
4500 |
122.3 |
16.2 |
102.1 |
4600 |
125.0 |
16.9 |
108.9 |
4700 |
127.7 |
16.5 |
108.5 |
4800 |
130.4 |
16.6 |
111.2 |
4900 |
133.1 |
16.9 |
116.1 |
5000 |
135.8 |
17.7 |
123.5 |
5100 |
138.6 |
17.6 |
125.4 |
5200 |
141.3 |
17.4 |
126.4 |
5300 |
144.0 |
17.4 |
128.9 |
5400 |
146.7 |
17.8 |
134.3 |
5500 |
149.4 |
17.5 |
134.6 |
5600 |
152.1 |
17.1 |
134.1 |
5700 |
154.9 |
17.5 |
139.3 |
5800 |
157.6 |
17.1 |
138.1 |
5900 |
160.3 |
16.9 |
139.6 |
6000 |
163.0 |
16.5 |
138.7 |
6100 |
165.7 |
16.4 |
140.2 |
6200 |
168.4 |
15.9 |
137.8 |
6300 |
171.2 |
15.4 |
135.4 |
6400 |
173.9 |
15.3 |
136.7 |
6500 |
176.6 |
14.8 |
134.2 |
6600 |
179.3 |
14.3 |
131.6 |
6700 |
182.0 |
14.4 |
134.7 |
6800 |
184.7 |
14.3 |
136.1 |
6900 |
187.5 |
14.2 |
137.4 |
7000 |
190.2 |
13.5 |
132.0 |
7100 |
192.9 |
13.2 |
130.7 |
7200 |
195.6 |
13.0 |
130.5 |
7300 |
198.3 |
12.8 |
131.1 |
7400 |
201.0 |
12.2 |
126.4 |
7500 |
203.8 |
12.1 |
126.7 |
|
|
|
|
これより最大トルク17.8kg・m(5400rpm)、最大馬力140.2PS(6100rpm)であることがわかる。
また、得られたデータを次の図3.1にまとめた(スキャナーを持っていないため、自作グラフ)。
図3.1 エンジン性能曲線
5.考察
5.1 トップエンド、6000rpmからの急激なトルクのダウンについて
図3.1において最も特徴的な部分は約6000rpmからの急激なトルクのダウンと
それによって起きる馬力の頭打ちである(2.1式 参照)。
ここで、カタログ値では最大トルクは16.5kg・m(5600rpm)、また最大馬力は165PS(7800rpm)であることと比較すると、
最大トルク発生の回転数はカタログ値とほぼ同じであるが、違いはその後のトルクダウンの割合である。
この現象の考えられる原因の一つとしてスピードリミッターが挙げられる。
ここで速度と回転数の表より、5速の6000rpmでは約163.0km/hである。
これよりスピードリミッターが本来の180km/hではなく、
少し早めに効いたとは考えられないだろうか?
しかし事実、回転数が7500rpmまで上昇し、その時の速度が約203km/hまで出ていることから判断すると、
前のオーナーにより、何らかの方法でスピードリミッターはカットされている可能性が強い。
スピードリミッターが正常に作動すれば、速度はせいぜい180km/hを数km/hオーバーする程度である。
またスピードリミッターが作動すれば、その瞬間は燃料の供給が完全にカットされるため、
馬力、トルクはもっと明らかに減少するはずである。
すなわち、それはアクセルを完全にOFFにしたのと同じ状態である。
よってスピードリミッターが原因ではないと考えられる。
二つめに考えられる理由としては、レブリミッターである。
レブリミッターは8300rpmで燃料をカットする。
測定した店の店員の話では、レブリミッターはかなり早めに効き始めることがあるとの事。
このトルクダウンの原因もレブリミッターではないかと説明された。
しかし、本来のリミットの8300rpmよりも2000回転以上も低い6000rpmでリミッターが効き始めるとは考えにくい。
確かに1速でベタ踏みした場合には吹け上がりが早いため、
8000rpm付近でレブリミッターの作動を体感したことはあるが・・・。
おそらくレブリミッターは原因ではないだろう。
三つめに考えられる原因として、測定した店員が意図的にアクセルを緩めたという可能性である。
こればっかりは店員を信じるしかないので、何とも言えない。
もし店員が意図的にアクセルを緩めたとすれば、それは最も納得できる理由である。
ここでは全面的に店員がアクセルをベタ踏みしていたことを信じるしかない。
他の店員の意見だが、例えばレブリミッターをカットした車両で測定する場合には、
店員がオーバーレブを恐れ早めにアクセルを緩め、このような形状のグラフが得られることがあるようだ。
つまり測定する店員のアクセルの踏み方によっても影響は生じるということである。
四つめに考えられる原因として、走行距離によるエンジンの劣化、
気温や湿度、タイヤの磨耗が挙げられる。
確かにこれらの条件が悪化すれば、パワーダウンは確実に起こるが
6000rpm以上のみで、しかもこれだけの低下を引き起こすとは考えにくい。
以上のことより考えられる原因として、チューニングの方向性の間違いが上げられる。
また運転する人の長年のクセにより、低回転域しか使わない乗り方をしていると、
4A-GEのような高回転型のエンジンでも回らないエンジンになってしまうこともあるらしい。
5.2 VTCと燃調の関係
この車両は中古で購入したのだか、前のオーナーの方によって取り付けられたVTCがあった。
VTCはVVTが高回転側に切り替わるポイントを任意に設定するためのコントローラーである。
純正ではVVTが高回転側に切り替わる際には、それに応じてECUは燃料噴射量を調整する。
しかしVTCを取り付けると、純正のECUでは切り替わりのポイント応じた燃調ができなくなる。
ここで社外のコンピューターもしくは燃調コントローラーが必要になってくるのである。
純正のECUによる燃調には多少のマージンがあるため、完全に純正の車両にVTCを
取り付けた場合であれば、ハイカムによる効果は多少は望めるかもしれない。
しかし、この時点ではTRDのエアクリと純正エキマニのバンテージ巻きがしてあるために
マージン分の燃料は使い切られ、ハイカムにとっては薄い状態にあるであろう。
こうなってしまうと、かえってパワーはダウンしてしまうと考えられる。
VTCやエアクリ、バンテージ巻き、点火系の変更点を活かすためにも、
燃調コントローラの取り付けは必要であると判断できる。
5.3 点火時期の進めすぎによる悪影響
一般的には点火時期には純正の状態よりも少し進めると、パワーが出る傾向にある。
点火時期を進めた車両でレギュラーガソリンを使用すると、
ノッキングが起こるため、ハイオク限定車となる。
ホンダのタイプRなどは出荷の状態ですでに点火時期は進めてあるが、
トヨタ車の場合は安全性重視のためにハイオク車でもマージンは多めにとってある。
何度も書いてしまうが、この車は中古で購入したものである。
個人売買だったので、購入時には車の状態をよく確認したつもりであったが、
点火時期については純正の状態から調整したという説明はなかったと思う。
(購入は約1年前のことで、今なら完全に理解しているというワケではないが、
当時は車に対する知識が乏しかったために聞いても意味がわからなかったのかもしれないが・・・。)
結論から言ってしまうと、点火時期の進めすぎであったと判断できる。
点火時期を進めすぎるとノッキングが起こるが、ノックセンサーにより
ECU側で遅角が行われていたことが確認できた。
さらにその状態でもノッキングが起こるために、ECUは高回転での
パワーを押さえ込む制御をかけていることもわかった。
これにより6000回転からの急激なトルクのダウンが説明できる。
5.4 反省点と今後の方針
反省点の一つ目として、「自分が理解かつ把握できない部分には手を加えるべきではない」
今回の最大の失態は点火時期の進めすぎである。恥ずかしい〜(/o\)
車に対する知識の豊富な方ならば、「それくらい気付けよ!」というレベルのことであるが、
まだまだ未熟な自分にとっては、それがムリであった。
よって車の症状から原因が特定できる、小さな症状でも見逃さずに感じ取る
自信がないうちは気軽に車をいじるべきではないと思う。
ネットや人から聞いた話だけで覚えられることには限界があり、
一番良い方法は、実際に車を動かしながら詳しい人に教わることだと思う。
自分もそうなのだが、どこからか「コレがいいよ!」という情報を得ると、
ついつい試してしまいたくなる気持ちは良くわかる。
自分の車に愛着のある人ならばなおさらだろう。
しかし、車は凶器であり人を死に至らしめてしまう場合もあるし、
良かれと思ってやったことでもエンジンを壊してしまう場合もある。
本当に自分の車に愛着があるのならば、こまめに洗車する、傷を直す、
車の構造や仕組みを理解する、メンテナンスに気を使うというところだろう。
チューニングはその次である。
反省点の二つ目として、「中古で車を購入したら、状態を正確に把握する」ということである。
この部分は自分ではかなり気を使ったつもりであった。
オイル関係、バッテリー(液がほとんど空っぽだった)、クーラント(これも減っていた)、
タイヤの溝、ブレーキパッド(前輪が残りわずかだった)、エアクリ(かなり汚れていた)、
プラグの焼け具合など、自分だけでなく知り合いの整備士の方にもチェックしてもらった。
が・・・、まさか点火時期までいじってあるとは・・・。(T-T)
やはり、気が付かない自分の責任である。
三つ目として「チューニング=調整、バランスが重要」ということである。
好きなときに好きなパーツだけを取り付けても、効果は望めないだろう。
「お金をかけていろいろ手を加えたのに、純正よりもパワーが落ちた」なんてのは救われない。
今回の例では燃調がポイントであり、この後燃調コントローラーを取り付ければ
各パーツの相乗効果により良い結果が望めるだろう。
今回のパワーチェックに関しては、結果は厳しいものであり、
オーナー自身の無知をもさらけ出す結果となってしまったが、
現状を改善するきっかけを作ることができた。
また自分と同じような初心者の方が同じ失敗を繰り返さないように参考になれば良いと思う。
自分自身にも勉強になったし、この件を通して新しい人たちとの貴重な出会いもあった。
測定した店の店員は結果に対して「しょせんはこんなモンですよ。」的な意見だったが、
そこで納得せずに疑問点をとことん追及しただけの価値はあったと思う。
いろんな人に手間をかけさせてしまったが(^^;
データというものは解析して初めて価値が生まれるものである。
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2005.1.10(月)更新
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